誰が見てるか分かんないですが、もういい! 気にしない! わはははは!
息抜きです(真顔) 一応隠すから、まぁ嫌いな人は見ないことだ。
連載……じゃないけど、気が向いたらまた続きを書くような気がします。そういうことで!

ある意味これも地味受?
次は人間の中の、というか学校にいる時の、とおるを書きたいなぁ。
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2
いつの間にか戸口に立っていた、うつくしい男にたじろぐ。
梓真のことを警戒している訳じゃないのに、俺はいつだってこいつを前にすると家族といる時のように振る舞えなくなった。人見知りよりもタチが悪く、うまく自分を守れずに、剥き出しのままでいるように心許ない気持ちになる。
梓真は姉の言葉が聞こえていなかったのか、応えもしないままこちらを見ていた。表情のない梓真はまさしく人外で、同じ生き物に見えないくらいにうつくしい。
「とおる」
なにか用事があってする呼びかけとは異なる、ただ呟かれる自分の名前に戸惑った。目を伏せると今度は、こちらを見てくれと言うように、奴は静かにもう一度告げる。「…とおる」
「……なに」
訊ねても何も答えずに、梓真は戸口に立ったまま動かない。俺はなんだか泣きたいような気分になった。「なにか、用?」
「…帰るなら、挨拶なんていいから、かまわず帰っていいんだぞ」
おまえは、俺のしもべでも、婚約者でも、なんでもないんだから……
梓真は何も言わない。なにを思っていても、無口だからなのか、何も言わない。いつもそうだ。俺の血を舐める時はちがうのに。顔を伏せて唇に触れた。もう弄らなければ、かさぶたから血が香ることもないだろう。
なのに、梓真は何も言わず、動きもしなかった。
俺はそれだけで狼狽えて、どうしたらいいんだ、と混乱した。すぐ傍で美玖ねぇが手を伸ばしてくれるまで、姉に頼ることすら思いつかなかった。
「梓ちゃん」
長椅子の背にもたれていた姉が、上から肩を押さえて、俺を抱き込むように目の前で腕を絡めた。顔を見上げることも出来ず、ただプラチナのような色の髪が顔に触れてくるのを甘受する。それだけのことで、俺は少しだけ落ち着いて、情けなくも両目を閉じて呼吸をした。
「とおるの望みに逆らうの?」
柔らかな美玖ねぇの声はひたすらに穏やかだった。
「……とおる が、」
りんごのように甘酸っぱい香りに包まれながら、だけど声を聞くだけでざくろの強いそれを思い出す自分がいる。
「望むのなら、今日は帰る」
瞼を開いたのは、何故だったろう。梓真の声は普段のものと全く変わらないように聞こえたのに。
正面からかち合った視線は、俺の目を梓真の湖面のように静かな瞳に釘付けにさせた。
「とおる」
やっと動いた梓真の身体は、招くようにその腕を俺へ向けて差し伸べる。
訳が分からない。困惑しながらも、今度はなぜだか怯みもせず狼狽えもしない俺の身体は、抵抗もなく姉の腕から離れて……戸口へ向かった。
廊下に辿り着いた俺が、美玖ねぇに退出の挨拶を告げる前に、酷く自然に腕が首元にまとわりついてきた。戸惑う俺にかまわず、さらさらした奴の髪が……と言うより頭が押し付けられる。なんというか、なついてきているような状態だ。
……訳が分からない。
「梓真?」
そう呼びかければ、ぴたりと動かなくなるし。俺はただただ戸惑うままに、とりあえず美玖ねぇに「また、あとで」と手を振った。にっこり微笑んだ顔と優雅に揺れるたおやかな手を見て、少し幸せな気持ちになる。
何故だか、そう、あのあまりに美しい顔は伏せられているからなのか、俺はずいぶんと落ち着いた気分で、自分の部屋へと戻ることにした。
部屋に入った途端、梓真は自主的に椅子になった。
椅子というか、……いや、とにかく俺の椅子になって、壁に掛けた時計の見えない位置へと腰掛けた。一瞬だけ迷ったけれど、横向きに座る形の俺には時計の文字盤が見えるし、夕食の時間になったら「放せ」と促せばいいだけの話だ。だけど、本当にこいつはいったい何を考えているんだろうか。「……なぁ」
「こんな風にしても、血はやらないぞ?」
だって俺の椅子はすぐ脇にあって、本当ならそこに座ればいいだけなんだから。
梓真は、当然だ、と言いたげに深く頷いていた。いや、だったら……なんで、こんな風にするんだよ。ますます訝しく思ったが、どうにも訊ねることさえ躊躇われた。妙に満足げにも見えたから。この状態の何に満足できると言うのか、やっぱり梓真は分からない。
「とおる」
「なんだよ……ちゃんと止まってる。いじんな」
触らなくても顔が見えるぐらいの距離にいるのに、口許に触れてきたということは出血を確かめたいんだろう。だけど、こんなに近くで、何を話すのにも奇妙に息が詰まる。やっぱり殺す気なんだろうか。
そうでないのなら、こいつはもっと自らの美しさの殺傷度をよくよく理解した方がいい。美玖ねえや父さんのように。
部屋に向かっていた時は、あんなに落ち着いた、むしろ居心地のいい気分になれた腕の囲いの中で、酸欠で死にそうなくらい頭がぼぉっとした。息が出来ない。だから距離を置くべきだ。だけど。
ふと目があって、ぎく、とした刹那に、また随分と自然な仕草でこめかみに柔らかな頬が押し付けられる。だから。おまえ、それはいったいなんなんだよ。うつむいてこっそりとした、ため息のすぐ傍で、奴は相変わらず黙ったっきり。
ただやっぱり、梓真のざくろが、酷くあまく香っていた。
【やっぱり続けようと思う】



